暦の上で最も寒い日、「大寒」も過ぎました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
大協組 建築部の竹村和樹です。
冬来たりなら春遠からじ ”If winter comes, can spring be far behind ?”
一見日本のことわざのようですがイギリスの詩人の言葉です。
と言うことで梅の写真を添付いたしました。
大寒は、二十四節気の最終節で、冬を6つに分けたうちの6番目の節気です。
毎年1月19日〜2月3日頃にあたり、2024年は1月20日(土)〜2月3日(土)です。
先日何気なく、娘とテレビドラマを見ておりましたが、そのドラマを見ていて常日頃のもやもやしたものが取れ、視界が良好になったような気がする今日この頃です。
そのドラマとは阿部サダヲさん主演ドラマ『不適切にもほどがある』です。
金曜日の10時からやっています。
脚本は宮藤官九郎さんという平成を代表する脚本家の一人です。近年は『あまちゃん』『いだてん』のようなNHKの作品も手掛けており、クドカン作品に触れたことがない人のほうが少ないかもしれません。
「観たことはなくてもタイトルは知っている」って方も多いと思います。
けれど彼の2000年代ごろまでの作品に投影されている価値観はかなり前時代的で場合によっては有害ですらあります。
その証拠に、アマゾンプライムWOWWOWのような地上波以外で彼の作品を視聴しようとすると、エピソードによっては「この作品は○○年に制作されたものです」といった字幕が挿入されます。
このドラマで挿入されている注意書きは、そういった事情を踏まえたパロディになっています。
宮藤官九郎さんや演者さんは自身の作風や価値観が社会の変化に取り残されていることを敢えて逆手に取ったドラマです。
トップガンの第1作が日本で公開されたのが1986年です。
音楽では少年隊の『仮面舞踏会』をはじめ、中森明菜、 おニャン子クラブなどアイドルが活躍していました。
駅前イオンはまだなくて、ホープタウンが出来て間もなくの頃です。
プラザ合意が1985年ですのでバブル景気に突入しています。
宮藤官九郎さんは1970年生まれで当時16歳。私と同級生で時代背景にちょうどマッチしているのもドラマに嵌らせます。
本作ではその1986年の「昭和おやじ」がタイムスリップして令和の現代に来てしまいます。
番組のサイトを見ると《昭和のダメおやじの「不適切」発言が令和の停滞した空気をかき回す!》と記されていますが、ただ昭和がヤバかったと笑うだけの物語ではありません。
前提として、令和の時代だとアウトな主人公の暴言や行動を、上手にギャグシーンとして昇華させています。
中学校の体育教師で野球部顧問が、教室や職員室でもくもくと煙るほどタバコを吸いまくっているし、野球部の指導では練習中に水を飲むことを禁止したり連帯責任でケツバットしたりと、やりたい放題。
言動の数々も、質のいいブラックコメディになっており、しっかり笑えておもしろい。やばいよ昭和!ありえないって。Z世代の若者はギャップを感じながらある意味新鮮に感じるでしょう。
第一話のテーマ「ハラスメント」も第二話の「働き方改革」もそれ自体が間違っていることではなく平成生まれにとっては普通のこと。
ドラマは昭和を生きてきた視点で作られていますが、令和社会の建前的であったり、過剰にコンプラが唱えられている部分の主張はZ世代にも通じるかもしれないけれど、昭和世代がが肌で感じる窮屈さや不自由さは世代によって感じ方・受け止め方が違うかもしれない。
彼の暴言や行動のすべてに肯定することはあり得ないけれど、でも逆に令和の価値観のすべてが正しいとも思えない。でもその時代を生きてきた人たちから見た令和社会の疑問から気づきを得てほしいというメッセージがあふれています。
このドラマは昭和と令和、どちらが正しいのかを検証する物語ではなく、“どちらも正しい部分がある” ということを見るものに感じさせます。
でも、それは同時に、“どちらも異常な部分がある” ことを白日の下にさらす意味あいもあるでしょう。
表向きは昭和の異常性をコメディにして笑う物語だと見せかけて、実は令和の異常性も浮き彫りにしていく。昭和のヤバい要素が改善された令和がハッピーというわけではなく、令和は令和で別種のヤバさが蔓延している時代だと気づかされます。
令和のコンプラVS昭和のど根性!みたいな(笑)
一見コメディのようですが実は社会派ドラマかもしれない(笑)クドカン脚本のドラマは時折風刺がぴりりと効いてそれが心地よい感じです。でも肩肘張らずにミュージカルも交えたエンターテイメントとして楽しめます。
もしこれを見て興味を持たれたら一度見てみてください。TVerで見逃し放送もしています。